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短編の美学 きりゅう映画祭

SANKYO、HEIWA、SOPHIAに代表されるパチンコメーカーや、
MITSUBA、山田製作所、小倉クラッチに代表される自動車部品メーカーを指して、ハイテク。
西の西陣、東の桐生と評される歴史深い織物業を指して、ファッション。
『ハイテクとファッションのまち桐生』のキャッチコピーの由来である。

これだけ読むとよくある地方の工業地帯の様だが、
実際の桐生の街並みは古京都と称されるほど、
古い街並みで昭和初期にタイムスリップしたような感覚に陥る情緒ある風景が多い。

『堕落論』『白痴』で有名な作家の坂口安吾は、この桐生の街並みに惚れ込み、晩年を桐生で過ごしたし、
同じく晩年を桐生で過ごした大川栄二ダイエー元副社長が創設した大川美術館(松本竣介、野田英夫のコレクションに関しては、日本最大。黒柳徹子や緒方拳がファンである)もあるということで、
実は芸術が似合う街なのかもしれない。

そんな桐生市と隣のみどり市を舞台にした短編映画を上映する「きりゅう映画祭」が
九月二十一日、桐生市織姫町の市民文化会館で開催された。

もともと最近の桐生・みどり市では、わたらせフィルムコミッションの尽力により、
ドラマや映画のロケが盛んにおこなわれていることから、撮影の土台が整っているのも、
この映画祭の後押しになっているのかもしれない。

四回目の今年は、オダギリジョーの出演や主題歌・劇中音楽をKIRINJIが担当した事で話題の
「ひもかわラプソディ」をはじめとした三作品が映画祭のために制作された。

「ひもかわラプソディ」は、キリンビバレッジの清涼飲料水「生茶」や大鵬薬品工業の「チオビタ」などの
CMを手掛けた桐生市出身の映像ディレクター中村佳代が監督を務めた。

桐生の名物うどん「ひもかわ」を愛する男が愛する女性のために
最高のひもかわを作るべく自分と向き合うラブコメである。
オダギリジョーの出演場面以外は、桐生が岡動物園など、すべて桐生市内で撮影された。
また作品の主題歌であるKIRINJIの「進水式」のミュージックビデオも中村監督が手掛けており、
ミュージックビデオの内容が本作品の続編ストーリーになっているのも実験的で面白い。

ほかの作品は、四百人以上の地元住民が出演しているSF映画「KI・RYU」、
両市からシナリオを公募した、誰もが幼い頃に経験したであろう甘酸っぱい想いが蘇る物語「名無しの幽子」。

「もともとは、2011年に公益社団法人桐生青年会議所が
創立55周年を迎えた記念事業として開催したのが「きりゅう映画祭」でした。
改めて町の人々に、スクリーンを通して自分達が住む桐生市・みどり市を見てもらうことによって、
更に郷土を愛する心が染まるのではないか?
そして、作品を桐生市以外の映画祭でも上映してゆくことによって、
地域の魅力を外へ発信してゆくことができるのではないかという想いの元、
第一回目の映画祭は開催されました。
当初は記念事業として考えていた事業でしたが、是非続けてほしいという要望のもと、
青年会議所の中の継続事業の一つとして四回目を迎えることになりました。
ただ、まだ四回目ですので、この映画祭がもっともっと地域に根付いた事業になってほしい。
そのため、一つ一つの作品では今まで以上に多くの町の人々にご出演頂きました。
桐生市・みどり市には建物や自然、食、産業など沢山の魅力がありますが、
今のこのまちを作っているのは、まちに暮らす人々であり、「人」に焦点を当てたかった。
そして、作品の一つ一つは短編ですが、一日の中のほんの一瞬の短い時間だけでも、
人を笑顔にできるような作品、楽しかったと笑って帰ることができるような映画祭にしたい。
私もジャンルを問わず映画が大好きで、重いテーマのものや辛辣なものも好きですが、
上記のような理由から、個々の作品を選ぶ際も、あまり現実直視なもの過ぎず、
年齢を問わず伝わるような夢のある優しく温かい作品を考えました」
第四回きりゅう映画祭実行委員会委員長の岩浅涼水さんはそう語る。

 

短編映画自体鑑賞するのは、今回が初めてだったので、
観賞前はそもそも15分~25分の映画と言われてもイメージが全然湧かなかった。
しかし、実際に鑑賞した後では、なるほどどうしてこれは病み付きになるかもしれないと思うほど
短編映画の面白さに感動した。

この面白さの感覚として、この例えが適切かどうかは大目に見てほしいのだが、
90~92年毎週木曜20時に放映されていた1時間番組だった頃の『世にも奇妙な物語』を
観た後のそれと似ている。

当時の『世にも~』は奇妙というテーマを軸とした十五分弱の作品を合計三話で放映した
一時間の短編オムニバス番組だったので、
現在の番組改編時期に特別編として放映される長くてくどい『世にも~』と比較しても、
短編ならではのスピーディーな面白さと余韻があった。
そして、その面白さと余韻は、今回の『きりゅう映画祭』の作品にも感じられた。
短歌、俳句などに代表されるように、
もともと日本人は無駄を削ったショートストーリーに美学を感じる民族なので、
実は短編映画は日本人に向いている表現手法なのかもしれない。

『世にも~』からは岩井俊二や飯田譲治など後の日本映画界を支える人材が輩出された。
『きりゅう映画祭』からも後にムーブメントを起こす監督や俳優が生まれるかもしれない。
そんな可能性を感じた映画祭だった。

再び、実行委員長の岩浅さんの話に戻る。
「映画祭を始めた事で目に見えての大きな変化が起こるということは、もしかしてまだ先かもしれませんが、
「改めて自分の住むまちを見ることによって、桐生がさらに好きになりました」というような
意見を沢山いただきました。
他にも桐生がうらやましくなったというような意見も。
普段から自分の住む町について考えている人は、それほど多いわけではないかもしれません。
しかし小さな一歩でもこの映画祭が、まちを思う気持ちを育てたり、
改めて気付いたりするきっかけとなる事ができたらと思います。
一人ひとりの郷土を愛する気持ちや憧れる気持ちから、
例えば(実は岩浅さんは東京出身)東京でお店を出すのではなく桐生で始めようかな?とか、
ひもかわうどん屋さんを巡ってみようかな?
自分も町起こしのために何かの団体に所属してみようかな?
というような行動が生まれたら、そしてそのような想いが積み重なったら、
いつか夢のあふれる街になるのではないかな?と思います」

また、きりゅう映画祭の今後に関しても、質問してみた。
「また来年もきりゅう映画祭は開催します。
まだまだ小さな映画祭ですが、地元の人々に愛される映画祭になってほしいと思います。
今年の作品の色とはまた別の作品が来年も並びます。
年明けから映画祭委員会が動き出し撮影等も行っていきますので、
エキストラの募集など目撃しましたら、皆様ぜひ出てみてくださいね!
撮影時は大変ですが、きっとかけがえのない思い出になると思います。
そして来年の映画祭も是非見に来ていただけたら嬉しいです!」

実際、今年の作品の中でも、日本青年会議所のメンバーや一般の方が主演級の役を演じていた作品もあった。
スクリーンデビューが身近に感じられる映画祭なのかもしれない。

■公益社団法人桐生青年会議所 きりゅう映画祭委員会
住所/群馬県桐生市仲町2-9-36桐生倶楽部内
TEL/0277-46-3777(平日10:00-12:00 / 13:00-16:00まで)
MAIL / cinema@kiryu-jc.com
2014年10月07日 | ライター:y_matsusima | 場所:| カテゴリー:イベント・祭 歴史・文化  

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