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お父さんのお小遣いで買える乗用鉄道模型を目指して~みたちおもしろ機械工房

子ども達と一緒に参加した前橋のイベント会場で「てトロ」という一風変わった名前を目にした。月夜の晩にオカリナを吹いているあの不思議な生き物を想像して会場へ向かったのだが、そこにはミニトレインがあった。気付いた子ども達は駆け込みながら乗り場へ向かう。

写真を見るとお分かりの通り、このミニトレイン、単に乗っているだけのものではない。自分でハンドルを回して進めることが出来るものだ。「てトロ」という名前は不思議な生き物から付けられたものではなく、「手で回すトロッコ」を略したものだそうだ。
自転車で足を回して前へ進むことは経験している子ども達も、手でハンドルを回して進むという感覚に真新しさと面白さを感じとったようで、「もう終わりにしよう」と声をかけるまで乗り続けていた。「お父さんも乗ってみてください」と声を掛けていただき筆者も体験をしてみたのだが、驚くべきはハンドルの軽さ。最初に3~4回転してあげれば、そのまま勝手に進むのではないか?と思うくらいの軽さだった。これは面白い、ぜひみなさんにも紹介したいと思い、お話を伺ってきた。

お話を伺わせていただいた方は、「てトロ」を設計・製造している三立応用化工株式会社の佐羽社長と菊地専務。前述のイベント会場で、子ども達の案内役を務めていた方達だ。

三立応用化工株式会社は、1961年(昭和36年)に工業用プラスチックの用途開発を目的に桐生で創業したものづくりの会社だ。桐生の繊維産業を支えていた機械の部品に、当時主流となりつつあったプラスチックを使用できないか。その企画・製造をするために会社を設立した。現在は1982年(昭和57年)に操業した伊勢崎工場に本社機能を移し、主力とするプラスチック製品に関する設計・開発・製造を行っており、ぐんまの優れたものづくり企業として県に登録されている。

筆者が伺ったのは創業の地である桐生工場。こちらでは繊維機械の加工を請け負っていたが、繊維産業の衰退に伴い、保守用部品の対応のみを行うようになっていた。「自分たちの技術、経験を活かして、面白い機械を作ることは出来ないか」そんな思いから2004年(平成16年)新規事業開拓室「みたちおもしろ機械工房」を立ち上げたそうだ。

立ち上げ当初は繊維機械の企画・製造の経験を活かし、面白い糸をつくる機械の企画・製造に取り組んでいたが、開拓室メンバーで日夜話し合っていた中、乗用鉄道模型を作ってみようということになったそうだ。当時、乗用鉄道模型を製造する会社は他にもあった。何か独自性を出せないものかと考えた結果、「お父さんのお小遣いで買える乗用鉄道模型をめざす」ことを開発のコンセプトに置いた。

本物と同じものを単純に小さくすることは簡単にできるそうなのだが、構造が複雑だと値段が高くなり、なりより壊れやすく、日々のメンテナンスが欠かせなくなる。『なるべくシンプルに』この発想の中で生まれたのが「てトロ」である。鉄道からトロッコ列車へと発想を転換し、さらに手で回す仕組みにすることで、部品数の削減や構造の簡素化に繋げることが出来た。そして家庭でも組み立てが行えるように部品のキット化にも取り組んだ。その結果、さすがに一ヶ月のお小遣いでは届かないが、ちょっと背伸びをすれば十分に購入することが出来る値段にすることができた。

野暮ったいと思われるかもしれないこのデザインも、実は試行錯誤と工夫の結果に辿り着いた形であった。

1.ホイールベースの最適な長さはどこか?
線路幅が5インチ(軌間127mm)を走る「てトロ」には、大人が乗っても倒れないバランスが要求されている。ちなみに先日発売されたiPhone6は4.7インチなので、iPhone6位の幅の上でバランスをとらなければならない。安定性を高めるには、ホイールベース(前輪軸と後輪軸の距離のこと)を長くすればよいのだが、長すぎるとカーブが曲がれず、脱線をしてしまう。安定させつつもカーブを曲がりきるためのホイールベースとはどこか?考えぬいた結果、今の長さになっているそうだ。

2.重心
「てトロ」をよく見ると自転車のサドルが使用されている。乗車中の前後左右のバランスが保たれ、かつ全体の重心が最も安定するのが自転車のサドルだったそうだ。実は試作初号機(下の写真の後方機)では、サドルが車両本体にはみ出す形となっていた。全体の見栄えは良いのだが、体重を少し後ろにずらしただけで前輪が浮いてしまい、非常に転びやすい危険な乗り物になってしまったそうだ。「てトロは子ども達が楽しめる乗り物。デザインよりも安全を重視しなければ。」現在のサドルの位置は、よほど無理なことをさせない限りは倒れることがない位置になっている。

3.ブレーキは実装しない
「てトロ」にはブレーキがない。体験イベントでは、ブレーキがないことで心配をされる親御さんもいると伺った。しかし実際にブレーキを付けても、車輪の回転を止めるだけで電車は走り続けてしまい、制御が効かなくなり、かえって危険になるそうだ。自動車に例えると、雪道でブレーキを踏んでタイヤがロックされた状態に近い。ハンドルを回しても一切の操作は受け付けず、ただ勢いに従うままとなってしまう。それと同じ現象となるらしい。鉄のレールと車輪の性質上、スピードを出そうとしても乗る人の体重比以上出せないそうだ。スピードを出そうと早く手を回しても、車輪が空回りをしてしまう。そのため子どもが出せるスピードは予想出来ており、もしものときは大人が十分に受け止められるそうだ。

一見すると単純な乗り物に見えたのだが、お話を伺うと設計者の意図や安全に配慮した設計が随所に散らばっていた。
「私たちは『てトロ』を商品として提供しておりますので」
そうお話いただいた佐羽社長からは、技術者としての確かな自身が読み取れた。
2009年(平成21年)、「てトロ」はグッドデザインぐんまに認定された商品となった。

「自ら走らせながらレールから伝わる力を感じて楽しんで欲しい。」

週末は県内で行われるイベントや保育園へ出張し、乗用鉄道そして「てトロ」の体験会が開催されている。
イベントでミニトレインもしくは「てトロ」の看板を見かけたら、お子さんはもちろんのこと、大人の方々も試乗していただきたい。きっと自転車や車、バイクでは味わえない体感を感じるはずである。

  

■三立応用化工株式会社
伊勢崎工場 (本社/第2)/群馬県伊勢崎市香林町2丁目1284-33
桐生工場/群馬県桐生市相生町5丁目484番地
HP/ http://www.mitachi-eng.co.jp/index.html
■乗用鉄道模型
HP/ http://www.sunfield.ne.jp/~mit......tsudo.html
■みたちおもしろ機械工房
HP/ http://saba.tea-nifty.com/omoshiro/
2014年10月30日 | ライター:tetsu | 場所:東毛 | カテゴリー:モノ・ワザ 

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