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日本のモダニズム建築を感じる重要な軌跡|旧井上房一郎邸|

高崎は「音楽のある街」という市民文化を表すキャッチフレーズを使用している。
その発端は何か?
少し調べてみると二人の人物が出てくる。
群馬交響楽団、群馬音楽センター、群馬県立美術館の設立などに
深く関わる人物「井上房一郎」、そして群馬音楽センターの設計者「アントニン・レーモンド」だ。
高崎観音を建立に力を尽くした井上工業社長・井上保三郎の長男である房一郎。
日本の建築の発展において多大な影響と功績を残した人物レーモンド。
この二人の関係性を知る上で不可欠な建物がある。

房一郎が自邸として建てた平屋住宅が高崎にある「旧井上房一郎邸」
この住宅。戦前・戦後を通じて交流した房一郎とレーモンドの友情の証でもある建物なのだ。

レーモンドが麻布に建てた自宅兼事務所に強く感銘を受けた房一郎が図面を提供してもらい
職人を連れ実測。それを基に自邸を建築した。
レーモンド邸は自宅兼事務所で構成されているが、井上邸は住居のみ。
パティオと居間、台所の位置関係も東西を逆転しており、
茶人であった夫人のために新たに畳の部屋を設けている。

学芸員の黒澤さんに話を伺いながら建物を見せてもらうことにした。
チェコ生まれの建築家の建物なのに、何かしら懐かしさを感じさせる。
「レーモンドは日本の民家に近代建築の考え方がすべてあると言っており
随所に日本家屋の要素を取り入れています。」
例えば、引き戸や障子はドアと違い空間を仕切ったり、解放できるとよく使用したそうだ。

リビングに入ると目についたのは独特の梁。
鋏状トラスと言うレーモンドの代表的なスタイル。
「モノを大切にする考えが根底にあり、身の回りにある手に入るものでと考え
足場にも使用される杉丸太を吟味して使用したそうです」
美しい。
そして、ダイナミックな使い方をしているのにも関わらず、空間と同化している。
備え付けの家具、スタンド、照明、暖炉はレーモンドの妻であるノエミ・レーモンドのデザイン。
そして、居間にある椅子は、ハンス・ウェグナーのYチェア。
恐らく、その梁の存在感を緩和させているのが、
生活を考えデザインした家具が随所にあるからなのではないだろうか。

そして、廊下を通りパティオへ
レーモンドはここで食事をしていたそうだ。主寝室と一体化した空間で居心地がいい。
お気に入りの庭園を見ながら食事する贅沢な時間をここで過ごしていたと思うと羨ましくなる。

主寝室の隣は、茶人でもあった夫人の茶室。
薄暗い空間をイサム・ノグチの「AKARI」に照らされ、茶室から庭を覗くと
額縁に入った絵を見るかのようで、空間を切り取ったように見える。

気候に合わせた建築で過ごしやすい空間の屋内。
椅子に座って庭を眺めていると時間を忘れてしまう。

麻布のレーモンド自邸はすでになく、
当時のレーモンドの建築を知るうえでも現在この「旧井上房一郎邸」は貴重なものになっている。

実はこの素晴らしい「旧井上房一郎邸」取り壊しの危機があった。
房一郎死後、諸事情により維持が難しく公売にかけられた。
晩年、房一郎には哲学する心を育て市民の精神的よりどころとする「哲学堂」の構想があり
積み立てられた建設資金と市民からの寄付で乗り越えた。
その後、高崎市が景観重要建造物として保存し美術館の一部として管理しており、
現在は高崎市美術館から入口となる。

建物を見るだけでこんなに素晴らしいものが群馬にあることに贅沢さを感じ
空間に浸ることでリラックスができる。
なおさら、井上房一郎、アントニン・レーモンドの人物を詳しく知ることで
さらには「音楽のある街」の背景を知ることでこの建物の見方が変わってくるに違いない。

群馬にはまだまだ魅力がたくさんありますね。

■旧井上房一郎邸(高崎市美術館内)
住所/群馬県高崎市八島町110番地27
TEL/027-324-6125
開館時間/
3月~11月:午前10時から午後6時まで(入館は閉館30分前まで)
12月~2月:午前10時から午後5時まで(同上)
※休館日は高崎市美術館に準じる
2013年05月03日 | ライター:gumi | 場所:高崎 | カテゴリー: 歴史・文化 

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